捜査機関への出頭を覚悟した人の姿を、何度か見たことがある。口達者な人も、逮捕される時が近づくとだまりがちになった。昨日の、村上ファンドの村上世彰代表の場合は違っていた。
とうとうと謝罪した、とでも言えばいいのだろうか。東京地検に逮捕される前の記者会見の映像では、弁舌の巧みさは以前とあまり違わなかった。
ニッポン放送株の売買を巡るライブドアとのやりとりにインサイダー取引があったという容疑を認めたが、「もうけようと思ったのではない」と述べた。残念ながら、にわかには信じがたい。自らを「証券取引市場のプロ中のプロ」と呼びながら、インサイダー情報は取りに行ったのではなく「聞いちゃった」と、素人であるかのように語る。罪の意識をどこまで持っているのだろう。
会見でやや気になったのは、これまで関連した企業の名を語る時の口ぶりだ。常に金を運用する対象と見ているせいか、株券という紙に印された社名を記号のように口にする印象を受けた。企業を形作る生身の人々やその家族への思いが株券より薄いように見受けられたが、思い過ごしだろうか。
「西国立志編」として明治初期に翻訳され、青年たちを鼓舞激励した英国の著述家スマイルズの『セルフヘルプ』に、こんな一節がある。「諸悪の根源は金それ自体にあるのではなく、金を『偏愛』することにある」(下谷和幸訳・野間教育研究所)。
村上ファンドもライブドアも東京の六本木ヒルズに陣取っていた。丘にそびえる「立志伝の塔」にまた一つ暗雲がかかった。

日语应试






