高速道路が渋滞し、行楽地に行列ができるこの時期は、場所によっては都心の方がすいている。しかし昨日、東京都心の表参道に長い行列ができていた。
開業から約3カ月になる大規模商業施設「表参道ヒルズ」で、開店してから行列の最後尾が入店するまで10分以上かかった。ファッション関係などの100近い店を目当てに、連休を利用して遠くから来た人も多かったようだ。
6階建てなので、同じヒルズでも超高層の六本木ヒルズとは印象が違う。六本木が肩を怒らせた戦士なら、通りに沿う長さが約250メートルに及ぶ表参道ヒルズは大きな船か長城のようだ。敷地は同潤会青山アパート跡で、並行する古いケヤキ並木との調和を心がけたという。
中のエスカレーターや通路には、人がびっしりと連なった。この混雑の中、地下3階の写真展には行列が無かった。映画「ベルリン・天使の詩」などで知られるヴィム・ヴェンダース監督と、妻で写真家のドナータさんの「尾道への旅」だ(「O(オー)」で、7日まで)。
敬愛する小津安二郎監督の「東京物語」の舞台となった町へ昨秋旅をした。約半世紀前の「東京物語」の場面を胸にしつつ撮られた町並みや海や人の姿は、その地とは縁の無い身にも懐かしさを呼び起こす。
ヴェンダース監督は本紙に述べている。「土地にはそれぞれの歴史があり、風景がそれを語りかけてくる」。表参道ヒルズを設計した安藤忠雄さんは、街の記憶を受け継いで未来に伝えることを考えたという。時には立ち止まって、風景が語る街の記憶に耳を澄ましたい。

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